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子育て Vol.31『親が教えるべきこと』

くすの木幼稚園  副園長 関 恵子

 「お母さんと…」「お母さんが…」こちらが投げかけた質問に対しての返答。質問内容は「誰と」や「誰が」といったことでしたし、この返答は一見何の問題もありません。…相手が子どもならば。

 これは、本学園の採用試験でのやり取りです。堪りかねた理事長先生が、最後に優しくこの学生さんに教えていらっしゃいました。「人に話をする時は、『お母さん』より『母』の方がいいよ」と。

 私は、この言葉遣いに関して小学5年生の時に担任の先生から教わりました。「人に話す時は『父』とか『母』『祖父』『祖母』。『お父さん』とか『お母さん』と言うのはもうおかしい。こんな風に言えたら君達も『しっかりした子だな』と思われるよ」そんな風にお話ししてくださいました。『しっかりした子』の言葉が魅力的で、早く自分でも遣ってみたいと思ったことを今でも覚えています。…そうして、その後の人生で、大のオトナが「お母さん」と口にする場面をよく目にするようになりました。その度に、あの時の担任の先生を思い出しました。「この人は教わらなかったのかな、誰もこの人に教えてあげなかったのかな」そう思いました。(余談ですが、この担任の先生は、勉強以外の様々なことを教えてくれる先生でした…!)

 

 学校の先生から教えてもらったことは、たくさんあります。学校の先生から教えてもらわなかったら、もしかしたら未だにこれを知らなかったかもしれない…と思うこともあります。でも、それは、どちらかと言うと勉強や技術が多く、生活するうえで必要な礼儀や常識等は、おおかた両親や祖母から教わりました。

 …自分の親のことを人に話す時に『父』や『母』と表現するのは常識です。『常識』と言えば、誰もが当たり前に知っていることのはずですが、でも、その『常識』も、誰かに教えてもらわなければ、いつまでも知らないままです。きっと、冒頭のあの学生さんは、誰にも教わらなかったのでしょう。一概には言えませんが、最近では学校の先生は、教科書にないことはあまり教えてくださらないようです。理事長先生は、学生さんが帰った後、ボソッと呟かれました。「あれは、教えていない大人が悪い…」と。ドキッとしました。私は教えているかな。我が子達が常識を知らなくて、人前で恥をかくようなことがあるんじゃないかな。大丈夫かな…。

 さて、私の三女は、この『常識』をあまりにも知らなさすぎます。いいえ、常識と言うよりしつけ…?未だにお箸の持ち方がNG!言えば正しく持てますが、もう高校生…。「アンタそれ恥ずかしいよ」次女にまでそう言われる始末。宛名に印字されている『行』を消して『御中』にすることを何度教えてもそのまま投函しそうになったり、自宅にかかってくる電話に出たがらなかったり、宅配便の受け答えを嫌がったり、他にも色々色々色々…。教えてきたつもりですが、『つもり』でしかなく、結局できない・やらないのだから、はたから見れば『知らない』と同じなわけで、それは結局、「教えていない親が悪い」になるわけで…。

人が常識のない行動をとったり恥をかいたりする時、やはりそれは、その『常識』と呼ばれるものを身につけていないその人の問題です。冒頭の学生さんも、恥をかいたのは本人であって(当の本人は恥をかいたとも思っていないかもしれませんが…)、お顔も拝見したことのないご両親ではありません。でも。やっぱり。…これは罪ですよね…。私の三女同様、いくら教えたところで、それができないのであれば、やらないのであれば、それは、『教えていない』のと同じ。我が子に恥をかかせたくないのであれば、我が子に『ちゃんと』してほしいのであれば、できるようになるまで親が教えるしかないのです。だって、我が子の代わりに親が採用試験を受けるわけにはいきませんから。

我が子と代わってあげられないことは、きっと、これからたくさんあります。だから、子ども自身が自分でできるようにならなければいけません。だから…幼稚園とご家庭で協力して、子どもが自分でできることを増やしましょう。そうやって、子育ての目標でもある『自立』を促していきましょう。

『自立とは、自分でできることを一つずつ増やしてあげること』先日の入園説明会で、理事長先生もそう仰っていましたよ…!

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